米国雇用統計とは?基本をおさらい
米国雇用統計(NFP:Non-Farm Payrolls)は、毎月第1金曜日の日本時間21:30(夏時間)または22:30(冬時間)に発表される経済指標です。農業部門を除く非農業就業者数の変化を示し、米国の景気・労働市場の強さを測る最重要指標のひとつとされています。
市場への影響が大きい理由は、FRBの金融政策(利上げ・利下げ)に直結するからです。雇用が強ければドル買い、弱ければドル売りというのが基本的な反応ですが、実際はそう単純ではありません。予想値との乖離・前回改定値・平均時給など複数の数字が絡み合うため、発表後の動きが読みにくい指標でもあります。
検証条件と方法
対象データ
- 通貨ペア:USD/JPY
- 期間:2019年1月〜2023年12月(60回分)
- 時間足:M5・M15・H1
- ツール:FT6(Forex Tester 6)でバックテスト
計測ポイント
- 発表後5分・15分・1時間・4時間の値動き幅(pips)と方向
- サプライズ(予想比±5万人以上乖離)とノーサプライズの結果比較
- 方向の一致率(最初の動きと1時間後の方向が同じか)
検証結果サマリー
60回分の発表を集計した結果が以下です。
年別・月別の値動きデータ
年ごとの傾向を見ると、相場環境によって結果に大きな差があることがわかります。
| 年 | 発表回数 | 平均値幅(5分) | 平均値幅(1h) | 初動→1h一致率 | 特記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 12回 | 24pips | 48pips | 58% | 比較的穏やか |
| 2020 | 12回 | 48pips | 94pips | 66% | コロナ禍・乱高下 |
| 2021 | 12回 | 32pips | 61pips | 55% | 回復期・やや落ち着き |
| 2022 | 12回 | 56pips | 108pips | 72% | 利上げ相場・高ボラ |
| 2023 | 12回 | 38pips | 68pips | 63% | 利上げ一服・やや落ち着き |
2020年(コロナ禍)と2022年(急速利上げ相場)は値動きが特に大きく、一致率も高い傾向がありました。逆に相場が落ち着いていた年は値動きが小さく、反転も多い結果になっています。
見えてきたパターン
データを整理すると、いくつかの傾向が浮かび上がってきました。ただし、これはあくまで過去データの集計であり、必ず再現されるわけではありません。
サプライズ時は初動が伸びやすい
予想比±5万人超の場合、初動方向に1時間後も動いている確率が71%。サプライズの大きさに比例して値幅も拡大する傾向。
ノーサプライズ時は反転多発
予想通りの結果のとき、初動方向への継続は48%とほぼフィフティフィフティ。発表後すぐのエントリーは危険。
最初の5分は最も値動きが激しい
スプレッド拡大・スリッページが最大になる時間帯でもある。スキャルパーにとっては特に注意が必要な時間。
発表15〜30分後の押し目が狙い目
初動が大きく出た場合、発表15〜30分後に一旦押し戻してから再び同方向に動くケースが多い。落ち着いてからのエントリーが有効な可能性。
雇用統計トレードの注意点
スプレッドとスリッページに注意
発表前後の数分間は、多くのFX業者でスプレッドが通常の5〜20倍以上に拡大します。たとえば通常0.3pipsのスプレッドが5pips以上になることもあります。この時間帯にエントリーすると、コストだけで利益が飛ぶケースも珍しくありません。
指値・逆指値が刺さりにくい
急騰・急落時には、設定した価格でオーダーが約定しない「スリッページ」が発生します。損切り注文を入れていても、想定より大幅に悪い価格で約定することがあるため、ポジションサイズを通常より小さくすることをおすすめします。
「読み」より「対応」を優先する
雇用統計の結果を事前に予測してエントリーする(いわゆるギャンブルエントリー)より、発表後の値動きを確認してから乗る方が再現性が高いことが今回の検証でも示されました。焦らず、15〜30分後の落ち着いたタイミングを狙う方が、長期的には有効と考えられます。
まとめ:検証から言えること
今回の検証から見えてきたことをまとめます。
- サプライズ時は初動方向に継続しやすい(一致率71%)
- ノーサプライズ時はほぼランダム。飛び乗りは避けるべき
- 発表直後5分はスプレッド拡大・スリッページ最大のリスクゾーン
- 発表15〜30分後の押し目・戻り狙いに一定の再現性あり
- 年によって値動きの大きさは大きく異なる(相場環境依存)
「雇用統計は動くから稼げる」という単純な話ではなく、「どう動くか」を過去データで検証したうえで、自分のルールに組み込めるかを判断するというプロセスが重要です。今回のデータはひとつの参考として、ぜひご自身でも検証してみてください。